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東京地方裁判所 昭和56年(レ)21号 判決 1981年7月16日

控訴人 本多節造

被控訴人 田村鉄治

右訴訟代理人弁護士 田口隆頼

右訴訟復代理人弁護士 梅澤和雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し、金七万九七六〇円及び内金六万〇一六〇円に対する昭和四一年一〇月二七日から支払ずみまで月一分の割合による金員を、内金一万九六〇〇円に対する同年同月二九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

4  仮執行宣言

二  被控訴人

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  控訴人は、被控訴人から、債権者控訴人、債務者西村三雄間の山口地方裁判所昭和四一年(ヌ)第二五号不動産強制競売事件の競売期日に、被控訴人を代理して入札に参加するよう委任を受けた(以下「本件委任契約」という。)。

2  控訴人は、昭和四一年一〇月二七日の右事件の競売期日に、被控訴人を代理して入札に参加し、農地を競落した。

3  控訴人は、右の委任事務処理のために、次のとおり費用を支出した。

(一) 昭和四一年一〇月二七日に、保証金八万三〇〇〇円及び競売調書謄本交付費用金二六〇円、合計金八万三二六〇円。

(二) 同月二六日から同月二八日の間

(1) 農地競買適格証明書取得のための、郵便切手代金七〇〇円及び書記料金一〇〇円。

(2) 日本国有鉄道東北本線赤羽駅から同山陽本線小郡駅までの鉄道普通旅客運賃及び小郡町から美東町までのバス旅客運賃各往復合計金一万〇八〇〇円。

(3) 右鉄道の寝台料金合計金二〇〇〇円。

(4) 日当三日分合計金六〇〇〇円。

合計金一万九六〇〇円

よって、控訴人は、被控訴人に対し、右3の(一)の費用のうち昭和五〇年四月二一日に配当を受けた金二万三一〇〇円を除く金六万〇一六〇円及び右3の(二)の費用金一万九六〇〇円合計金七万九七六〇円並びに内金六万〇一六〇円に対する右3の(一)の費用を支出した日である昭和四一年一〇月二七日から支払ずみまで月一分の割合による利息及び内金一万九六〇〇円に対する右3の(二)の費用を支出した日の後である同月二九日から支払ずみまで年五分の割合による利息の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は否認する。その余の事実は知らない。

三  抗弁

控訴人は、昭和四一年、被控訴人に対し、本件委任契約の委任事務処理費用及びこれに対する利息の支払を求める訴えを山口簡易裁判所に提起し(昭和四一年(ハ)第一九五号立替金請求事件)、請求棄却の判決を受け、右判決は、昭和四三年二月九日に確定した。

四  抗弁に対する認否

否認する。

第三証拠《省略》

理由

一  本件は、控訴人が、被控訴人から、山口地方裁判所昭和四一年(ヌ)第二五号不動産強制競売事件の競売期日に被控訴人を代理して入札に参加するよう委任を受けて、右競売期日に被控訴人を代理して入札に参加し、農地を競落した際に要した事務処理費用及びこれに対する利息の支払を求めるものであるが、委任事務処理費用の償還請求については、一個の委任契約の事務処理のために支出した費用の償還を求める限り、その費用の項目の数や支出の回数いかんにかかわらず、訴訟物は一個と解すべきであり、委任事務処理費用に対する利息の請求についても、同様に、一個の委任契約の事務処理のために支出した費用に対する利息の支払を求める限り、訴訟物は一個と解すべきである。

二  《証拠省略》によれば、控訴人は、昭和四一年に被控訴人に対し、本件委任契約の事務処理に伴ない保証金、旅費などの費用を支出したとして、これらの費用の合計金九万一二四五円及び内金六四四〇円に対する同年九月一六日から、内金八万三七〇〇円に対する同年一〇月二八日から、内金一〇〇〇円に対する同月二九日から、内金一〇五円に対する同年一一月五日から各支払ずみまで年五分の割合による利息の支払を求める訴えを山口簡易裁判所に提起し(昭和四一年(ハ)第一九五号)、昭和四二年六月二〇日に、請求棄却の判決の言渡を受け、これを不服として、山口地方裁判所に控訴し(昭和四二年(レ)第一八号)、控訴審では右費用金八万三二六〇円及びこれに対する昭和四一年一〇月二七日から支払ずみまで年五分の割合による利息の支払を求めると請求の趣旨を減縮したが、昭和四三年一月二二日に控訴棄却の判決を受け、同年二月九日に、右請求棄却の判決は確定したことが認められる(以下これを「前訴」という。)。

三  本訴と前訴とでは、費用を支出した日や費用の項目などにおいて若干異なるところがあるものの、本件委任契約の事務処理費用及びこれに対する利息の支払を求める点では全く変わりがなく、右一で述べたところからすれば、控訴人は同一訴訟物について再度訴えを提起したものといわざるをえないのであるから、結局、本訴請求は、前訴の確定判決の既判力により、棄却を免れない。

四  よって、本訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 越山安久 裁判官 吉野孝義 森義之)

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